第17回「台詞を覚えるために③」
今日のテーマは
「台詞を覚えるために③」
前回までの「台詞を覚えるために①と②」を踏まえて、今日は具体的例題を上げて説明します。
前回私は、台詞は気持ちのキャッチボールであるとお話しました。
キャッチボールである以上ボールは、1つです。自分が投げたボールは相手に渡り、受け取った相手はそのボールに気持ちを込めて返して来ます。その間、こちらは相手のボールを投げる様子をじっと見て、どんなボールを投げて来るのか待っています。転がしてくるのか、フライのようなボールなのか、怒りのこもった早いボールなのかを・・・。
何とかぎりぎり捕れた様なボールを返してくれば、こちらの気持ちも変わり少し意地悪なボールを投げてしまうかもしれない。キャッチボールは会話です。
上記の事を踏まえて以下の台詞を読んでみてください。
A「あれだけ遅れるなって言っただろう。」
B「すまん。」
A「お前と居るとろくなことがないよ・・・このバカ!」
B「! バカって何だよ! 俺が寝過したのは、お前が夜中に電話してきたからだろ。」
A「え! 俺の電話のせい? だったら俺は何で遅れてないんだよ。」
B「お前は、起こしてもらえる家族と一緒だからだろ。」
A「だったら、お前も家族と暮らせよ!」
上記の会話は、相手の台詞を聞かないと次の台詞は出てこない筈です。
例えば、Bの台詞だけを活字で覚えても気持ちが繋がらないので、頭から活字を消すのは難しいです。ところが、Aの台詞を聞いて感じる気持ちで覚えると覚え易くなります。
Aの「・・・このバカ!」を聞くと、Bは「! バカって何だよ。」と云う様に。
また、第16回で触れた役作りも役立ちます。
この場合、Bは昨日の夜から遅れて到着した、ここまでの自分の行動を作りあげておきましょう。
すると、Bは「俺が寝過したのは、お前が夜中に電話してきたからだろう。」と、気持ちで話す台詞が喋れます。
自分の台詞を言いやくする気持ちの変化は、相手の台詞の中にあります。相手の台詞を聞きながら気持ちを動かしていけば、台本通りの台詞が出てきます。
この繰り返しで、台詞を気持ちの動きで覚えるので、役者さんは大量の台詞を覚える事が出来るのです。活字だけで覚えるのは至難の技です。
あなたも挑戦してみてくだい。きっと、何かをつかめる筈です。
今日はこの辺で、ありがとうございました。